広報担当の北海道脳神経外科記念病院の横山です。
当院では6年前から当院回復期リハビリテーション病棟における初発脳卒中片麻痺患者に対する歩行自立の予後予測の因子の検討をするために、データ収集をしておりました。
何度か学会でもご報告させていただいておりましたが、今回データ数が集まり、当院としてある程度の信頼性のある統計結果も出たと思われます。
ただ、臨床場面ではこの予後予測に当てはまらない患者のほうが重要視しなければいけないとも考えられます。
さらに予測だけではなく、その自立の予測の流れに乗れるようにどうしていけば良いのかという治療展開のヒントとしても重要ではないかと思われます。
ちなみに、当院では「SIAS合計」,「BBS合計」,「FIM運動合計」、「FIM認知合計」、「基本情報(性別、年齢、急性期期間、障害側、病型)」のデータを回復期リハビリテーション病棟入棟時から2か月目までで統計を実施しました。
今回の予後予測因子としては、入棟時のBBS合計(カットオフ値:15点)、FIM認知合計(カットオフ値:21点)、1か月後のBBS合計(カットオフ値:33点)、FIM認知合計(カットオフ値:25点)、2か月後のSIAS合計(カットオフ値:55点)、FIM運動合計(カットオフ値:60点)、FIM認知合計(カットオフ値:26点)が抽出されました。
当院の統計結果として特徴的であったものが、入棟時のFIMの認知合計です。
初期のデータ数が少ない段階でも抽出されており、カットオフ値としても大幅なズレがないので、自立においてFIM認知合計は非常に重要な指標ではないかと考えられます。
またBBS合計では、入棟時で15点、1か月後に33点という結果となっています。
当院の初発脳卒中患者の回復期リハビリテーション病棟への転棟は平均2週間前後となっています。
このことから、発症から2週間以内である程度バイタルサイン等の全身状態が安定し、座位や立位練習も開始できている段階ということが条件であるといえます。
歩行自立に向けて回復期リハビリテーション病棟入棟から1か月後のBBS合計の利得が18点という条件を満たすためにも、立位や歩行訓練までを重点的に実施できることが重要となってくるため、発症から2週間以内で全身状態を安定させておくことが非常に重要な条件ではないかと思われます。
また今回は装具作成患者を抽出して、統計を実施したところ抽出因子やカットオフ値が装具作成していない患者とさほど変わらないという結果であったのが印象的でした(SIAS合計は低い傾向あり)。
ということは、装具を使用していない、いわば裸足の状態での立位能力を高めていく必要が重要であるということが示唆されました。
このように単に予後予測するだけではなく、そこからどのように治療展開に結びつけていくかということが臨床家としては非常に重要ではないかと考えられます。
当院では今後評価項目の見直しや追加を実施していき、今後も予後予測のアップデートを図っていきたいと考えています。