こんにちは。
「中堅理学療法による北海道神経理学療法研究会」
代表を務めさせていただいている小野圭介です。
前回、2019年11月に北海道理学療法士会の「画像の診方」講習会にて
講師をさせていただいた内容を一部公開するはずでした。
結果、
「文化系理学療法士」である私が「小説風講習会」へ
等身大で挑戦するという講習会前の想いで終わりました。
前回の冒頭にて
「中堅理学療法による北海道神経理学療法研究会」を、
「中堅理学療法による北海道理学療法研究会」と、
恐れ多くも大きく踏み外した誤字にて文字数を削減したにも関わらず、
です。
今回こそ一部公開するというのが北海道理学療法研究会としての姿勢です。
「ポーン、、、ポーン、、、」
動きとは不釣り合いな轟音の中で響く電子音。2回。
これから無情なまでに襲いかかる内蔵への圧迫を
無機質に誠実にみせた悪意を込めて頭の中へ知らせてくる。
押しつけられているが、どこか拠り所のない浮遊感とともに
飛行機は飛び立つ。
私はいつもこの瞬間は、どこ吹く風と本を読んでいる。
訂正しよう。
どこ吹く風というような顔をして本を読んでいる。
いつもは通路側に座るのですが、講習会を間近に控えていたので
東京からの復路は窓側を指定し、はじめて飛行機に乗った少年のごとく
窓から外の風景を一心不乱に(独りで)撮影していました。
講習会で投げかけたかったことは、
「飛行機はなぜ飛ぶのか?」
私が自己の理学療法に疑問を持つきっかけを与えてくれた言葉です。
十勝上空から見える畑の絨毯、熱意と魂がその美しい一マス一マスに込められています。
一心不乱少年boy※が撮影した十勝の風景をご覧いただきながら、
「飛行機が飛ぶしくみはよくわかってない。」
そのような言葉で講習会は始まりました。
※注釈:一心不乱少年boy=一心不乱少年少年=少年のような30歳代のこと
整形の術後症例に理学療法を行う場合、術部周囲を視診します。
どこに術創部があるのか、状態はどうか、周囲は腫れていないか。
脳画像でも同じように損傷した部位がどこなのかその周囲は腫れていないかなどを評価する習慣は必要だと思います。「midline shift」と横文字ですがようは腫れていないかどうかです。
理学療法士が脳画像をみる目的は、症状の理解、潜在性の評価、予後予測のためと考えます。
一つの情報として評価し、理学療法戦略へ活用するためです。
神経理学療法は発展途上であることから現状では分からないことが多々あります。
だからこそみえるもののみで挑んでそれが最良の理学療法となるのでしょうか。
また、試験ではないので分かったふりもする必要はありません。
医療行為の一つのコンポーネントに過ぎない理学療法において、
医師の診断、教科書、先輩に聞くなど使えるものは何でも使い、
常時カンニングして良いのです。
脳画像もカンニングペーパーの一つです。
カンニングペーパーをたくさん持てるようになる作業が理学療法の勉強なのかと思います。
目を背けないことが重要です。
神経領域は分からないことばかりなので分からないことを恥ずかしがる必要はありません。
飛行機ですら飛ぶ仕組みはわかっていないのですから。
カンニングペーパーが必要です。
本講習会では皮質脊髄路の判別、被殻出血の捉え方、視床出血の捉え方のカンニングペーパーをお渡しました。
理学療法戦略に活用する上で重要なのは、運動障害のありなしをみるのではなく
いかに潜在性を見出すのかです。
皮質脊髄路が保たれているので今手足が動いていないのは意識障害によるものか。
皮質脊髄路の損傷のようにみられるが血腫に端の方で腫れが引いたら潜在性があるのでは。
補足運動野の損傷であり運動の計画に問題はあるが動かすこと自体には潜在性があるのではないか。などなど。
カンニングペーパーをもとに同じような部位の損傷症例を2例提示しました。
実際の臨床経過をそのまま伝えていったのですが、その2例は最終的な到達度に差があったのです。
その差があった要因は「高次脳機能障害」でした。
こうなると、高次脳機能障害のカンニングペーパーも欲しくなります。
脳画像評価内においても高次脳機能障害に関わるカンニングペーパーはあります。
例えば、半側空間無視においても背背側経路、背側経路、腹側経路がありそれぞれの経路で起こる無視の症状や予後などがかわっていきます。臨床場面では判別しにくい症状も、脳画像でカンニングしているため、臨床で特徴を捉えやすくなるのです。
飛行機においてもクッタ・ジューコフスキーの定理というものがあります。
「揚力=空気の密度×空気の速度×循環」
渦が発生し、渦の放出により揚力が生まれるという定理(という認識)です。
飛行機の航跡に生成される飛行機雲を観察すると、
渦を巻くような雲になっていることが確認できます。
先ほど飛ぶ仕組みは分かっていないという意見を提示しましたが、
学習を深め、現象を観察すると一つの疑問が湧き起こります。
「実は分かっているのではないか?」
起承転結の“転”に到達し、物語(講習)は折り返し地点となり休憩を迎えました。
そう、
折り返し地点の予定でした。
講習の残り時間をみました。
残された時間は、
15分!
たったの15分しか残されていなかったのです。
本ブログも長文となっておりました。。
「ポーン、、、ポーン、、、」
無機質に誠実にみせた悪意を込めて頭の中に警告音が鳴りました。
予定時間を超過する講習はどんなに良い内容でも私は不快にしか感じません。
決められた中で伝えたいことを伝えるということが重要です。
“結”に向かい怒濤の盛り上がりになる予定が
怒濤のスピードで終わらせることとなりました。
飛行機がなぜ飛ぶのか?その原理の説明には、
「マグヌス効果」「流体力学」などが関連します。
学習を重ねた結果、飛行機がなぜ飛ぶのか?という問いへの私の返答は
「私には分かりません。」
です。
神経理学療法に携わる私たちは、分からないことに目を背けず
少しでもより良くできるために
予後予測の精度を向上する努力
予測を上回る改善を実現する努力
が必要です。
分からないものだらけの世の中で
その努力の一つに脳画像評価はあるのです。
~講習 is 完~
いかがでしたでしょうか。
当研究会による知識の情報発信をとのことで、「画像の診方」講習会の内容をとの要望があり今回書きました。
他にも「台本を綿密に作り込んだシンポジスト経験」や「スティーブ・ジョブス風シンポジスト経験」なども知識の情報発信として提供する準備はできていました。
振り返ると皮質脊髄路の判別方法や高次脳機能障害の画像評価など求められたであろう部分はそぎ落とされ、小説風講習会として伏線回収へ挑んだ大いなる失敗の物語となりました。
自分でも驚いています。
しかし、例えば今回提示した飛行機に関して勉強することは神経理学療法に関係がないと感じましたか?
これが、私の一つの学習方法です。
関連のないと思われるものから関連があるものに紡いで学んでいく。
生活と理学療法を統合解釈する学習方法はコストパフォーマンスが良いぜよ。
以上です。ありがとうございました。
※講習会に参加していただいた方にはこの場を借りて御礼申し上げます。