匂いと大脳辺縁系と新型コロナウイルス

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広報担当の北海道脳神経外科記念病院の横山です。

 

先日のブログでコーヒーの話をさせていただきました。

 

その時、「なんで匂い(嗅覚)はこんなにすぐに思い出せるのだろう?」と考えさせられました。

 

さっそく調べてみると、それは「嗅覚だけは大脳辺縁系の海馬に直接送られる」ためだということなんですね。

 

大脳辺縁系とは帯状回・偏桃体、そして海馬から成り立っている脳の部分を総省したものです。

帯状回は血圧、心拍数、呼吸器の調節のような自律神経機能のほか、意思決定、認知などの情動の処理を行います。また偏桃体は意識できない恐怖感、不安、悲しみ、喜び、直観力、情動の処理を行っています。そして海馬は目・耳・「」からの短期的な記憶や情報の制御をしています。

 

一方、大脳新皮質は合理的で分析的な思考や、言語機能を司り、理性をコントロールしています。これは人間が進化した時に新たに獲得した脳の部位なので、新皮質と呼ばれています。

 

要は、大脳辺縁系は本能や情動を担当し、大脳新皮質は理性を担当しており、脳の嗅覚を担当する部分と海馬(記憶を司る器官)が隣接していることで、匂いと記憶は密接に関係しているのです。

 

また、いい匂いと感じると遺伝子が遠く、臭いと感じると遺伝子が遠いなど遺伝子レベルの判断も嗅覚でできてしまうとも言われています。

遺伝子が近いもの同士(いわゆる近親者)での交配は多様性を減少させて感染症などに対する免疫力を低下させてしまうため、生物は本能的に遺伝子の遠いものとの交配をしようとするのです。

そのため、よくある娘とお父さんの間での、「お父さん臭い!」が起こりえるのです、これはいわゆる正常な反応であるとも言えます。

 

また、昨今は新型コロナウイルスが猛威を振るっていますが、新型コロナウイルス感染での症状・後遺症として嗅覚障害が報告されています。

 

新型コロナウイルスによる嗅覚障害によって記憶力の低下や、良い匂いの人(遺伝子が遠いパートナー)を探しにくくなるリスクも考えられます。

 

改めて我々人間にとって、「匂い」は非常な重要な感覚であることを感じさせられました。

 

最後になりますが、新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されてきていますが、まだまだ油断せずに1人1人が出来る予防策を精一杯実施して、明るい未来のためにも嗅覚を大切にしていきましょう!